認知症とは

記憶、思考、見当識(時間、場所、人の理解)、判断、言語などの認知機能を司る脳が、様々な病気などによって障害され、日常生活に支障が生じるようになった状態をいいます。
65歳未満で認知症を発症した場合を「若年性認知症」、軽いもの忘れなどが見られるものの、日常生活にはあまり支障がない程度の状態を「軽度認知障害」(MCI=Mild Cognitive Impairment)といいます。

認知症高齢者の将来推計

厚生労働省が行った研究によれば、65歳から69歳までの認知症の有病率は、全体で1.5%であったのに対し、80歳から84歳では22.4%でした。
また、別の調査では、平成24年(2012年)の65歳以上の認知症(軽度者も含む)の人は約460万人、有病率は15%で、このまま上昇した場合、令和7年(2025年)には730万人、有病率は20.6%、令和22年(2040年)には953万人、有病率は25.4%まで増加すると予測されています。
もはや認知症は、誰もがかかる可能性がある病気だと言えます。

認知症の原因・種類

認知症の原因

認知症を引き起こす原因は、70以上あるといわれています。

認知症の原因となる主な病気
分類主な疾患名
神経変性疾患アルツハイマー病、レビー小体病、前頭側頭葉変性症、進行性核上性麻痺、皮質基底核変性症など
脳血管障害脳梗塞、脳出血、くも膜下出血、ビンスワンガー病など
内分泌・代謝性・中毒疾患甲状腺機能低下症、ビタミンB1欠乏症、肝性脳症、低酸素脳症、アルコール関連脳症、薬物中毒など
感染性疾患クロイツフェルト・ヤコブ病、各種脳炎、髄膜炎など
外傷性疾患慢性硬膜下血種、頭部外傷など
腫瘍性疾患脳腫瘍、癌性髄膜症など
脳液循環障害正常圧水頭症など
中枢免疫患神経ベーチェット、多発性硬化症など
その他サルコイドーシスなど

認知症の種類別割合

認知症の種類別の統計では、アルツハイマー型認知症が67%と最も多く、次いで血管性認知症が20%、レビー小体型認知症が4%、前頭側頭型認知症が1%、その他が8%となっています。

認知症の種類別割合

認知症の症状(中核症状)

加齢と認知症によるもの忘れのちがい

認知症といえば「もの忘れ」を思い浮かべる人が多いと思います。
「もの忘れ」は加齢とともに進みますが、「加齢」と「認知症」による物忘れは表のように違いがあります。

加齢による物忘れアルツハイマー型認知症による物忘れ
特徴・体験の一部を忘れる。(例えば、食事を食べたことは覚えているが、おかずに何を食べたか忘れる)
・ヒントがあれば思い出すことができる。
・忘れやすいことを自覚している
・症状はあまり進行しない
・日常生活に殆ど支障ない
・進行に伴い、体験したこと全てを忘れてしまう(例えば、食事を食べたこと自体記憶に残らない)
・ヒントを出しても思い出すことができない
・もの忘れの自覚がない
・症状が徐々に進行する。
・進行に伴い日常生活に支障が生じる

症状の種類

認知症の症状は、脳の神経細胞が壊されることで起きる「中核症状」と「中核症状」に伴い起きる「周辺症状」の二つに大別されます。

中核症状

中核症状には、「記憶障害」「見当識障害」「理解・判断力障害」「実行機能障害」「失行・失認・失語」があげられます。
中核症状が進んでいくと以下のように日常生活上、これまで見られなかった行動が見られるようになります。

中核症状の特徴と生活場面で見られる行動
中核症状特徴生活場面で見られる行動
記憶障害古い記憶は保たれているが、新しい出来事(近時記憶)を覚えるのが難しくなる・同じことを繰り返し話したり、聞くようになる
・食事をしたのに、食べていないと言い張る
見当識障害進行に伴い年月日・時間・曜日・季節などの「時間」、自分がいる「場所」、家族や友人など「人物」の順でわかり難くなる・歩き慣れた道でも迷うようになる
・自分の娘を自分の姉だというようになる
理解・判断力障害物事を正しく理解し、状況に応じた判断を下すことが難しくなる・暑いのに冷房をつけない
・自動車を運転した際、道路を逆走した
実行機能障害物事を計画的に考え、実行することが難しくなる・料理が得意だったのに同じものばかり作るようになる
・掃除と洗濯を同時に行えなくなる
失行運動機能に障害がないにも関わらず、目的とする動作を正しく行うことが難しくなる・着替えができなくなる
・箸・スプーンが上手に使うのが苦手になる
失認感覚機能(視覚・聴覚・触覚)に障害がないにも関わらず、ものを認識し、把握することが難しくなる・スマホを見てもスマホだとわからない
・鳥の声を聞いても鳥だとわからない
失語言葉を司る脳の機能が低下し、言葉の聞き取りや会話、文字を書くことが難しくなる・込み入った話を理解できない
・言葉は出るが、何を言っているのかわかり難い

症状の現れ方や進み方

中核症状の現れ方や症状の進み方は、人それぞれ異なります。
その理由の一つが、イラストの様に脳は部位によって果たす役割が異なり、脳のどの部位の神経細胞が破壊されているかで現れ方が異なるためです。

また、認知症の種類によって脳の神経細胞が破壊される部位や症状の現れ方などに特徴がみられます。

アルツハイマー型認知症(センター便りNo1参照)
破壊されやすい部位よく見られる症状経過の特徴
・海馬
・側頭葉
・頭頂葉
・記憶障害
・見当識障害
・理解力・判断力障害
・実行機能障害
・失語・失行・失認など
・脳の病変が始まってからおおよそ20年かけて発症する
・初期には、近時記憶障害、時間の見当識障害、判断力の障害が現れ、徐々に側頭葉や頭頂葉に萎縮が広がり、中期には場所、人物の見当識障害、失認・失行・失語など、様々な障害が起きる
レビー小体型認知症
破壊されやすい部位よく見られる症状経過の特徴
・後頭葉
・頭頂葉
・脳幹
・幻視(見えないものが見える)
・パーキンソン症状(筋肉がこわばる。歩行や動作が遅くなる。ふらつく)
・うつ状態
・自立神経の症状(便秘、低血圧、立ちくらみなど)
・レム睡眠行動障害(睡眠中に大声をあげたり、体を激しく動かす)
・認知機能の変動(日や時間帯によって、理解力や注意力に差がある)
・初期から便秘・嗅覚異常・抑うつ・レム睡眠障害が見られる
・初期にはもの忘れは目立たないことが多い
・進行に伴い嚥下(飲み込み)障害が見られるようになる
・調子の良い時と悪い時をくりかえしながら徐々に進行する。
血管性認知症(センター便りNo2参照)
破壊されやすい部位よく見られる症状経過の特徴
梗塞や出血、血流が低下した部位、大きさによって異なる・血管が障害された大きさや部位によって症状が異なる
・保たれる機能にムラがある
・自発性・意欲の低下
・感情失禁(きっかけがなく、または些細なことで泣き、笑う)
・麻痺やしびれなどの神経症状
・言語や嚥下障害
・障害される場所によって異なるが、比較的急に発症し、階段状に進行していくことが多い
・意欲低下から始まり、脳梗塞等の再発で、会話や記憶の障害が現れることが多い
・アルツハイマー型認知症を合併する例もみられる
前頭側頭型認知症
破壊されやすい部位よく見られる症状経過の特徴
・前頭葉
・側頭葉
・人格の変化
・反社会的行動(万引き、無銭飲食、信号無視)
・常同行動(いつも同じ場所を歩くなど、同じことを繰り返す)
・時刻表的生活(決まった時間に決まった行動を取る)
・自発性の低下
・食行動の異常(甘いものを大量に食べるなど)
・言葉の意味がわからなくなる
・発語が困難になる。言葉の量が減少するなど
初期には人格的変化や反社会的行動が、中期には自発性の低下や言語障害が現れる

認知症の症状(周辺症状)

「周辺症状」は、行動面と心理面に現れることから、専門分野では「行動・心理症状」(BPSD=Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)という言葉が用いられています。

主な行動症状
徘徊家の中や屋外をウロウロする
暴言・暴力感情を抑えきれずに、他人を罵ったり、叩いたりする
介護への抵抗トイレやオムツの交換時に介護者の手を払いのけたり、大声をだす
弄便・失禁 手で便をさわり壁などに擦る。トイレに間に合わずに衣服や便器を汚す
異食・拒食食べ物でないものを口に入れる。食事をすすめても拒否する
主な心理症状
不安、焦燥感不安や焦りが生じる、落ち着かない
抑うつ不安が募り、気分が落ち込み、意欲、やる気がでなくなる
物盗られ妄想もの忘れが進み、物を置いた場所を忘れて、他人が盗んだと思いこむ
嫉妬・妄想誰かと浮気していると思い込む
幻視実際にはないものが見える

症状を起こす要因

行動・心理症状は、中核症状に伴い生じます。ただし、個人差が大きく症状が起きる人もおられれば、起きない人もいます。
では、何故、人によっては症状が起きるのでしょうか。
認知症の中核症状が進むと、日常生活で出来ないことが増えていきます。それに伴い、認知症の人の心の中には、「不安」「焦り」「混乱」「不快な思い」「被害的な思い」が生じ、心身共に不安定な状態に陥りやすくなります。
そのような状態に、「体の不調」「環境の変化」「介護者の不適切なケア」などが加わると、大きなストレスとなり、症状が起きやすくなると考えられています。
そのため、ご家族の方や周囲の人が患者様の心や体の不調のSOSを的確につかみ、適切なケアができるかが重要な鍵になります。少しでも気になる症状が見られたら、できるだけ早めの相談が症状の改善や悪化防止にはとても役に立ちます。

早期発見・早期治療が重要

早期発見・早期治療が重要な4つの理由

1.「治る認知症」がある

70以上ある原因のうち、神経変性疾患などで認知症になった場合は、根治はできません。しかし、正常圧水頭症、慢性硬膜下血腫、ビタミンB12欠乏症、甲状腺機能低下症などは、早期に適切な治療を行えば、認知症状が改善できるものがあります。いわゆる「治る認知症」です。それだけに認知症専門医による早期鑑別診断が重要なのです。

2.症状の進行を遅らせることができる

軽度認知障害の段階で早期治療や生活習慣の改善ができれば症状の進行を遅らせることができることがあります。また、認知症と診断を受けても早期から抗認知症薬の服薬やデイサービスなどを利用し、運動や脳トレで脳の活性化を図ることで症状の進行を遅らせることがあります。
1日でも早いうちに認知症の専門家へ相談することが、1日でも長く脳の健康を保つ上でも役に立つのです。

3.患者様が判断できる間に重要な事を決めておくことができる。

人が最期を迎えるにあたり、様々な事を決めておかなければなりません。例えば、心肺停止となった時の延命措置や、亡くなった後の資産、遺品、遺骨の整理のことなど沢山あります。重要な事を、患者様が判断できる間に決めておくことができれば、患者様も安心して最期を迎えることや、ご家族の方も悔いのない看取りを行うことができると思います。いつまでに、どのように決めていくかなど認知症の専門家のアドバイスが、決断の助けになると思います。

4.ご家族の方の心理的・精神的負担を軽減し、余裕をもって介護ができる。

認知症と診断を受けた直後はご家族の方も動揺します。ご家族の方が冷静にこれからの事を考えるには、症状の現れ方や進み方を知ることや、認知症の専門家にご家族の方の不安や悩みを聞いてもらうことがとても役立ちます。

また、行動・心理症状は、ご家族の方や介護者の関わり方によっては悪化の原因になります。軽度の場合は、関わり方を変えるだけでも症状が改善することもあります。症状が改善すれば、ご家族の方や介護者の心理的、精神的負担も軽くなり、余裕をもって介護ができるようになります。早めに認知症の専門家へ相談することが1日でも早くご家族の方や介護者が楽になる近道にもなります。

主な相談窓口

認知症についてお悩みの方は、お一人で悩まずにまずは専門機関にご相談下さい。

認知症医療センター

認知症の専門医療機関として県・政令市から指定を受けた機関です。
福岡県から指定を受けた病院が当院を含め11病院、北九州市では2病院と3つの診療所(連携型)が、福岡市では2病院が指定を受けています。
いずれのセンターも専門スタッフがしっかりサポートいたしますので、安心してご相談ください。なお、福岡県内の指定病院については県のホームページをご参照ください。

福岡県認知症医療センターについて(福岡県庁サイト)

認知症かかりつけ医

「かかりつけ医認知症対応力向上研修」を修了した医師で、認知症の診断の知識やご家族の方からの相談に対応できる医師のことをいいます。
もの忘れ外来への受診にご本人が抵抗を感じていらっしゃる場合には、お近くの認知症かかりつけ医へのご相談をお勧めいたします。

直方・鞍手地区の認知症かかりつけ医の一覧(PDF)

地域包括支援センター

高齢者の介護・医療・保健・福祉に関する地域の第一線の総合相談窓口です。
社会福祉士、看護師、保健師など専門知識を持ったスタッフが、認知症に関する相談、介護予防サービス、保健・福祉サービスの紹介、医療機関や介護事業所との連携調整を行っています。また、介護保険の認定申請の代行も行っています。

直鞍地区の
地域包括支援センター
所在地電話番号
直方市地域包括支援センター〒822-8501
直方市殿町7-1 
0949-25-2391
鞍手町地域包括支援センター〒807-1305
鞍手町大字新延414-1 くらじの郷内
0949-43-3019
小竹町地域包括支援センター〒820-1192
小竹町大字勝野3167-1
0949-62-1225
宮若市地域包括支援センター〒823-0011
宮若市宮田29-1
0949-33-3456

在宅介護支援センター

自宅で暮らす高齢者やご家族の方の生活上の悩みや不安に相談に応じる相談窓口です。
窓口での相談や必要に応じてご自宅などを訪問し、保健・福祉サービスの情報提供、サービスの申請手続きの代行、医療機関やサービス提供機関との連絡調整などの業務を行っています。

直方市の
在宅介護支援センター
所在地電話番号
愛和園在宅介護支援センター〒822-0011
直方市大字中泉1182-25
0949-28-1098
五月園在宅介護支援センター〒822-0033
直方市大字上新入字和田2116-7
0949-25-0123
青風苑在宅介護支援センター〒822-0033
直方市大字上新入2490-14
0949-24-1523
長光園在宅介護支援センター〒822-0002
直方市大字頓野259-53
0949-26-8586
お住まいの地区によって各センターが担当する地区が異なります。詳しくは直方市健康長寿課高齢者支援係(0949-25-2391)におたずねください
宮若市の
在宅介護支援センター
所在地電話番号
在宅介護支援センターわかみや〒822-0152
宮若市沼口967-1
0949-55-3035
和(のどか)在宅介護支援センター〒823-0004
宮若市磯光1294-1
0949-34-3032
照陽園在宅介護支援センター〒823-0004
宮若市磯光2159-1
0949-32-2588
お住まいの地区によって各センターが担当する地区が異なります。詳しくは宮若市健康福祉課高齢者福祉係(0949-32-0515)におたずねください
その他地域の
在宅介護支援センター
所在地電話番号
やすらぎ園在宅介護支援センター〒807-1303
鞍手町大字木月1826-1
0949-42-6988
小竹町在宅介護支援センター〒820-1192
小竹町大字勝野4204-151
0949-62-8878

社会福祉協議会

地域の自治会、関係団体などと共同で、地域福祉を推進していく民間の団体です。
認知症などにより判断能力が不十分な方を対象に、権利擁護の一環として介護福祉サービスがスムーズに利用できるよう、日常の金銭管理、預貯金・印鑑・権利証などの預かりを支援する「日常生活自立支援事業」を実施しています。
また、独自に「認知症相談」、「法律相談」、「配食・移送サービス」などを行っている協議会もありますので、詳しくはお電話またはホームページでご確認ください。

直鞍地区の社会福祉協議会所在地電話番号
直方市社会福祉協議会〒822-0026
直方市津田町7-35
0949-23-2551
宮若市社会福祉協議会〒823-0011
宮若市宮田4406-1
0949-32-0335
小竹町社会福祉協議会〒820-1103
小竹町大字勝野3362
0949-62-2028
鞍手町社会福祉協議会〒807-1305
鞍手町大字新延414-1
0949-42-7800

若年性認知症支援コーディネーター/若年性認知症サポートセンター

若年性認知症コーディネーターは、若年性認知症の人やそのご家族の方からの医療・福祉・就労などの相談に応じ、行政、職場、かかりつけ医との間を調整する役割を担います。
福岡県では、若年性認知症支援コーディネーターを配置したサポートセンターが1カ所設置されています。

福岡県若年性認知症サポートセンター(特定非営利活動法人たすけ愛京築)

〒824-0004 行橋市金屋649-1
☎ 0930-26-2370
E-mail:jakunenfukuoka@gmail.com
https://www.jakunenfukuoka.com/

ご相談は、電話もしくはメールでも可能です。

認知症の人と家族の会直方

「認知症への正しい理解を広め、認知症の人やそのご家族の方が安心して暮らし続けることができるまちづくりを目指しています」を目的に活動を行っている団体です。
全国組織と都道府県および各地域に支部があります。「認知症の人と家族の会直方」の主な活動は以下の通りです。

主な活動

  • 認知症の人や家族のつどい
  • 認知症相談  
  • 男性介護者のつどい
  • 若年性認知症交流会
  • 認知症、認知症予防、介護の学習会 
  • 認知症や介護体験の講演活動
  • アルツハイマーデー交流会
  • 「ケア・カフェのおがた」の開催

連絡先

090-4347-1833(宗廣様)
(※)直方市のホームページにも掲載されていますのでご参照ください。
認知症の人と家族の会直方(直方市webサイト)

認知症の人と家族の会直方チラシ

お役に立つ情報

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